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前住職忌明に際して anchor.png

法雲寺前住職廣昭(以下:老僧)が著したこの本は、平成28年1月29日に法雲寺に納められました。
その日は丁度、老僧の二(ふた)逮夜(たいや)当日で、「これは良いお供えの品を納めてもらえた。」と喜ぶ反面、「もう2週間早く印刷に出していたら、老僧自身が本を手にとって出来映えを確かめられただろうに。」と少し残念な気持ちも半分。
もし、老僧生前に本が出来上がっていたなら多分今頃は『正誤表』作りに勤しんで居て、死(し)辰(しん)も少しは先延ばしとなっていたかも知れません。そう思うと残念な気持ちの方が勝るでしょうか?

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法雲寺の歴史の不明点 anchor.png

法雲寺の歴史の中で幾つか不明な部分があります。その一つが村岡山名氏菩提寺となる江戸時代より前の法雲寺の姿。また、村岡山名氏菩提寺と定めた山名矩(のり)豊(とよ)公が晩年、それまでの日蓮宗から天台宗へ法雲寺を宗旨替えさせた事です。矩豊公は自他共に認める熱心な法華経信者でしたから尚更のことです。この宗旨替えの事も、法雲寺の前身のことも、その辺りの事情を説明したものは何も伝わっていません。

老僧はこの本を著すことにより、今まで不明であった部分も含んで法雲寺の起こりと変遷について一筋の流れを導き出してくれました。これからは老僧が明らかにしてくれた流れを基本として、後に続く者が折々に傍証を肉付けして法雲寺の歴史を語っていくことにしたいと思います。
大概、お寺の縁起というものは堅苦しい印象ですが、この本は縁起という前に読み物として、さらりと読めるように思えますので、お時間がある時に気軽に頁をめくってみて下さい。

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「法雲寺縁起」刊行にまつわる紆余曲折 anchor.png

作成の切っ掛けとなった寺史「円融寺」, 766.jpg

私が何かの調べ物の折りに、江戸時代の初めに起きた日蓮宗内の「受不施派」と「不受不施派」の対立に関する一文を目にし、それを老僧に渡したことが有りました。
対立の内容は長くなるので、ここでは触れませんが、最終的には江戸幕府の裁定により「不受不施派」は解散させられ、その所属寺院は「受不施派」に転派するか、天台宗への宗旨替えを迫られます。その年代が元禄4年(1691)で法雲寺が天台宗に変わった年と一致するのですが・・・
正直な話、私などは例え同時期のことであったとしても、片や当時の仏教界のみならず江戸幕府を巻き込んでの大論争と、山名氏菩提寺とは言うものの但馬の山寺の宗旨替えが直接結びつくとは思えませんでしたが、老僧には何か感じるものがあったのでしょう。数日の内に、法雲寺と同じ時期に日蓮宗から天台宗に転向した東京のお大寺(たいじ)(碑文谷・圓融寺)のご住職に問い合わせの手紙をしたためて居りました。
しばらくして先のご住職から丁寧なお手紙と共に重厚な『圓融寺史』を頂き、一読しただけで確信を強くした老僧は、その勢いで「法雲寺縁起」の執筆に取りかかりました。時に平成26年秋の事です。

(この対立と法雲寺との関連は本書でお確かめください。)

その秋から翌27年の春までの約半年、それこそ何かに取り憑かれたように老僧は原稿書きに没頭し、痛む腰を貼り薬や入浴で紛らわせ、コタツの周囲に新旧の資料を壁のように積み上げては事務用便せんに1頁ずつ細かい文字で埋め尽くしていきます。
それは朧気になっていく一方の記憶を何とか形が分かる間に少しでも文字として残そうとしているようにも見えました。

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三代の共同作業 anchor.png

晩年の前住職, 753.jpg

一冬の苦闘の末、翌春4月には初期の原稿は完成し、次はこの手書き原稿を元に製本に向けての作業に移るのですが、これは老僧一人では難しく否応なく我々も巻き込まれます。
老僧の手書き原稿から息子(副住)がパソコンに文字を入力し、それを引き継いで私(住職)が頁の体裁や資料や図表を加え、老僧が仕上がりをチェックする三人の分業体制で節ごと、章ごとに活字化していく段取りです。
当初はそのようにスタートした作業ですが、一冬の間無理を重ねた事も有って、4月下旬以降何度か老僧の入院などが間に入り、作業はなかなか思うようには進まず、ようやく本の内容が完成して、老僧同席の上で印刷業者の方と打ち合わせが出来たのは4月の活字化作業を開始してから8ヶ月経った12月のことでした。

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今振り返ってみると anchor.png

縁起の一頁, 755.JPG

この本は、老僧が執筆を始めた平成26年の秋から印刷業者にデータを渡す27年の晩秋まで約1年間の時間を経て、老僧と、老僧の指図を受けた私と息子の三人がかりで仕上げた本となります。
写真の写り具合から、表罫線の太さに至るまで細かな注文を連発し、折角仕上げた箇所でも平気で大幅な変更を言い出す老僧と、それに振り回され、その都度腹を立てたり、文句を言ったりしていた我々。
今から思えば、この本を作らなければ成らなかった事で普段より老僧と濃い一年間を過ごせたのかも知れません。
内容自体は余り面白くも無いお寺の歴史ですが、頁をめくった際にどことなく飄々とした老僧の語り口を感じて頂ければ幸いです。

尚、「正誤表」は作っておりません。本文中の誤りも八十八翁廣昭の味の一つとして、どうかお許し下さい。

(平成28年3月4日法雲寺吉川廣隆)

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