お金が掛からない供養とは? anchor.png

 立場上、「供養」とは?、何を以って供養か?と、聞かれることが多い訳ですが、何時もお茶を濁すような事を言ってその場をしのいでいる限りです。 とはいえ「供養」ということを考えるときに、大金を掛けて、立派な石塔や仏壇を準備し、それだけをが供養の本筋か?と問われればいささか疑問を感じます。
 天台宗を日本に伝えられ、比叡山延暦寺を開かれた宗祖・伝教大師(最澄)がご自分の死期が近いのを覚り、弟子達を枕元に呼び寄せてご遺言を託されました。

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その冒頭で伝教大師は、「我が為に仏を作るなかれ、我が為に経を写すなかれ」と、つまり、私の亡き後、供養の為にと仏さんを作ったり、写経等の行は必要ないと・・・今で言えば立派な石塔や仏壇は必要ないと言うところでしょうか?
でも、弟子達にしてみれば、何を以って師匠である伝教大師のお心に応え、供養に通じることが出来るのか?と言う疑問が残ります。伝教大師は更に言葉をこう続けられます。「我が志を述べよ」と。
 平安時代始め、伝教大師は古い体質の奈良仏教に失望し、天台宗と言う新しい仏教宗派を起こされ、大師の一生は旧仏教勢力との対立や、天台宗を一人前の仏教宗派へと成長させることに費やした生涯でした。その道半ばで伝教大師は自らの死期が近いことを覚られた訳です。
 伝教大師の思いとしては、まだまだちよち歩きの天台宗をしっかりとした一宗派に育てて欲しい、自分では成し遂げられなかった夢を弟子達に託す、その一心であったかと思えます。その気持ちが「我が志を述べよ」と言う言葉に凝縮されているのでしょう。

「我が為に仏を作るなかれ、我が為に経を写すなかれ、我が志を述べよ」
(爲我勿作佛。爲我勿寫經。述我之志。)

 もっと端的に言い換えれば、「特別な供養など無用、それよりも私の志を多くの人々に伝えてくれ」となるのでしょうか?余分なものをばっさりと切り捨てたいさぎ良さを感じます。
 弘法大師と並び宗教的天才と称される伝教大師ほどの方だからこそ、そこまで言い切れたのかもしれませんが、天台宗の檀家である我々としても「供養」と言うことを考える時に、宗祖の言われた言葉である以上、重く受け取らねばならないようにも思えます。
 じゃあ、伝教大師の言われた「我が志を述べよ」とは、我々にとっては何であるのか?
我々にとっては何を守り伝えていくことがご先祖への供養と通じることになるのでしょうか?

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父母の背中 anchor.png

 我々の最も身近な師は父母のはずです。昔から言い古されてきた言葉に、「子は親の背を見て育つ」と言うのが有ります。子供はどんな親の背中を見て育つのでしょう?ご自分のお父さんお母さんの背中を思い出してみてください。多分、何かにもたれ掛かって休んでいる背中ではなく、家族のため子供のために一生懸命何かに打ち込んでいる後姿を思い起こされる方が多いかと思います。 何処にでもある何気ない当たり前の姿かと思いますが、その姿からは自分の人生に正面から向かい合い取り組まれてきた真剣さが漂います。そして、その姿を傍で一番見守ってきたのは子である我々自身です。
 今現在、時代の末端に生きる我々は全てが全て、先人が積み重ね、形作った物の恩恵を受け生活をさせて貰っています。先人が種をまき次代が実を収穫し、そして次の代の為にまた新たな種をまく。その繰り返しを無限に繰り返し我々の今があるわけです。人の生き方もまた然りです。親の生き様から無言の内に多くを学んで来たのではないでしょうか?
その当たり前の繰り返しが果たして今の時代出来ているか?我々自身も次代の為に何か示せているか?疑問です。
 時代が変わり生活の様式も日々変化の限りがありません。「親は親」、「子は子」と言う考えも有りますが、人生を大切に丁寧に生きると言うことは何時の時代も共通なことかと思えます。

 真摯にひたむきに自らの人生と取り組んできた父母や先祖の生き方を思い、そこから良い点を学び取り、誤りを正し、自分の人生の一部する。
そして、さらに自分の生き方を通し、次の世代に何か良い影響を与える。そんな生き様自体が我々にとっての「志」かも知れませんし、父母や先祖に対する供養の一つなのかも知れません。



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