お墓掃除
お盆が近づくに連れ、気になるのがお墓の掃除。法雲寺でもお寺の裏の墓地に始まり一二(ホイ)峠・坪谷・御殿山に観音山・・・歴代藩主・住職のお墓に加え、村岡を離れられた各家のお墓、お盆が終わるその日まで掃除に追われる毎日です。気を利かせたつもりで早め早めに取り掛かれば、お盆までに草が伸びて、また一からやり直し。かといって、お盆直前に一気に片付けてしまうには人を何十人も雇わぬ限りは無理な話です。まあ今のところ少人数でコツコツと一件ずつ地道に片付けていくのみです。
お墓は言うまでも無く丁寧に扱うべきものではありますが・・テレビで活躍の占いの先生は「正しいお墓参りの方法」について、「お墓に水を掛けるなんて、ご先祖に冷や水をぶっ掛けるようなもの」とか、「墓石は故人を偲ぶようにタオルで優しく拭く」とか言われているらしいのです。
幾らお墓は大切なものと言われても、「お墓、即ちご先祖そのもの」と言う考えは、どこか違うような気がします。
どうも我々はお墓の下に遺骨が納めてあれば、その上の印(しるし)に過ぎない墓石までも魂が宿っているように思いがちです。だから、占いの先生の珍説にも思わず納得してしまうのでしょう。
しかし、お墓に魂が宿っていると考えるならば、ご先祖様は未だに成仏されずこの世に留まっていることになります。これはこれで少し困ったことでしょう?
私はお墓と言うものは、あの世(浄土)に旅立たれたご先祖様の拠代(ヨリシロ)であり、ご先祖と心を通わせる為の通信機のようなものだと思います。
例えば、村々に神社があり、そこに天空からの神をお迎えしお祭りを行ったり、神社に参って神様に祈願をしたりするのと同じく、お墓は各家各家のご先祖をお招きしたり、相談事を投げかける場所で、各家専用の拠代であり、一種の通信機では無いでしょうか。
また、ご先祖側の立場で考えれば、我々が故郷に里帰りしたとしても、実家ではなくホテルや旅館を利用したとすれば、故郷に帰ったと言う実感も余り沸きにくく、どことなく落ち着きません。ご先祖にしても同じことでしょう。お盆に里帰りしたご先祖は実家であるお墓に戻られ、そこで皆さんがお墓参りでお迎えに来られるのを首を長くしてお待ちです。
拠代であり、ご先祖様の実家でもあるお墓ですから、帰ってこられるご先祖様のために、水で清めてあげることは何らご先祖様に無礼を働いている訳でもありませんし、ご先祖様に気持ちよく過ごして頂くためには、ある程度は掃除も必要でしょう。ただ、大切に大切に思う余りに、前述の占いの先生のように「墓石が生身のご先祖そのもの・・・」のような考え方には違和感を感じます。
無心になって行うお墓掃除はご先祖様と心通わせる年に数回しかないチャンスです。もし機会がありましたら、相談事を心の中に準備し、作務をしながら問いかけて見るのも良いかもしれません。きっと良い答えが得ることが出来ると思います。
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