(3)山名氏霊牌
さて、山名氏菩提寺として発足した法雲寺が第一にしなければならないのが、御歴代御位牌の奉安です。
此度の入部を控えて調製された大位牌は御霊屋(おたまや)が完成するまで相当に長い期間、仮の御座所にお祀りしなければなりません。日映上人は御位牌の荷を開山堂に運び込ませ、自らの手で包みを解(ほど)かれました。
幅四十センチ・丈九十センチという巨大な黒塗りの札表(ふだおもて)にはご三方の霊名が金色の微光を放っております。ここでちょっと蛇足を付けておきます。
東林の院号は中国廬山(ろざん)の東林寺から来て居ります。東林寺は僧俗が一体となって風雅な参禅生活を送った事で知られて居ります。禅高公も非僧非俗の身分ですから共感を深められたからでしょう。それに加えて「鉄庵」です。これは申すまでもなく、時の妙心寺貫首鉄山宗鈍老大師から戴かれたもの―勝手には付けられません―ですから、禅高公がいかに妙心寺一山と密接な関係であったかが分かろうというものです。
豊政公の「法雲」、御内室の「養安」もともに仏典の佳句から採られました。そこへ「日号」が加わります。
本来このお二人には無かったのですが、矩豊公の法華入信に伴い「日号」を追贈されたからです。
今ひとつ申し添えます。院殿大居士という麗々しい法号は、五位以上の階位を受けた方とその御内室のみに授与されます。
五位とは宮中へ伺候した時、御殿に上がる事をゆるされる資格で〈殿上人〉(てんじょうびと)とも言います。更に禁中奥深く参入できるのが三位(さんみ)以上の公家、御門内に入れても昇殿できないのが地下人(ぢげにん)です。